2015年7月16日木曜日

安保法案与党合意 自衛隊の役割大きく前進も残る制約 武器使用に「日本ルール」

安保法制与党協議会後の会見で記者の質問に答える自民党の高村正彦副総裁(手前)。奥は公明党の北側一雄副代表=11日午後、衆院第2議員会館(酒巻俊介撮影)
 11日に与党協議会で最終合意された安全保障関連法案は、集団的自衛権の行使容認など自衛隊の役割を大きく前進させる内容だ。だが、憲法9条をめぐる従来の政府解釈との整合性を確保することが前提だったため、自衛隊の行動を制約する日本独自の枠組みは残った。一部野党は「戦争法案」と批判を強めているが、諸外国の水準と比べれば安保法制が整備されても厳しい法的制約が課せられていることに変わりはない。

 「集団的自衛権の限定的行使の意味が米国人には分からない。過剰に期待されるのも困る…」

 最近訪米した与党協議会の自民党側出席者は11日、こう不安を吐露した。

 国際法上、集団的自衛権は密接な関係にある国が攻撃された場合に自国への攻撃とみなし、共同して反撃する権利を意味する。

 しかし、昨年7月の閣議決定では密接な国が攻撃されても即座に反撃に加わることを許していない。他国への攻撃が日本の「存立危機事態」に当たると認定された場合に限り行使できる。このような集団的自衛権の考え方は日本以外に採用している国はなく、政府内では「なんちゃって集団的自衛権だ」という自嘲の声すらある。
個別的、集団的自衛権が行使できない状況では、自衛隊は全面的な組織戦を意味する「武力行使」をすることはできない。有事に至らない「グレーゾーン事態」などで認められるのは自らを守るためなどの「武器使用」に限られている。武力行使と武器使用は双方とも英語で「USE OF FORCE」と表現する。両者の区別は、日本でしか通用しない。

 安保関連法案が成立すれば「武器等防護」を定めた自衛隊法95条を改正し、グレーゾーン事態で米軍やオーストラリア軍を防護することが可能となる。しかし、ここで自衛隊が行えるのは必要最小限の武器使用に限られている。

 米軍の部隊はグレーゾーン事態でも、全面的な武器使用(=武力行使)が認められており、防衛省幹部は「難しいのは法案が成立してからだ。自衛隊の部隊行動基準(ROE)を作成し、米軍との共同訓練を積み重ねて齟齬(そご)を来さないようにしなければならない」と話す。

ただ、国連平和維持活動(PKO)や、欧州連合(EU)などが主導する人道復興支援活動では、任務遂行型の武器使用ができるようになる。これまでは、自衛官や自衛隊の管理下にある国連職員らを守ることに限った自己保存型の武器使用しかできなかったが、任務遂行型も認められることで治安維持任務に就くことも可能となる。

 一方で、日本や国際社会の平和のために戦う他国軍を後方支援する場合、自衛権が発動されているケースを除き、任務遂行型の武器使用は引き続き認められない。他国軍の武力行使と一体化すれば集団的自衛権の行使に当たる可能性があるためだ。この「武力行使との一体化」も戦後日本が憲法9条の下で生み出した独自の概念だ。

 武力行使との一体化を避けるため、従来は自衛隊が活動を開始してから撤退するまでの全期間を通じて「戦闘行為がない」ことが確保されていなければならなかった。新たな安保法制では「現に戦闘行為が行われていない現場」であれば後方支援や人道復興支援ができるようになる。

 とはいえ、近くで戦闘行為が始まれば他国軍を見捨てて撤退するというケースもあり得る。自衛隊内には「こうした日本の特殊事情を他国の政府や軍に理解してもらうことは容易ではない」(幹部)との声も漏れる。(杉本康士)